言葉には、伝えるという基本的な機能があります。これは、人だけでなく、動物たちもジェスチャーや声などの非言語的な手段を使ってコミュニケーションを行っていることからもわかります。本質的に、言葉は「伝える」という目的を持っていると言えるでしょう。
この仮定に基づけば、言葉はわかりやすさを基本としているはずです。しかし、実際にはわかりにくい言葉、例えば哲学的な表現や専門的な言葉もあります。では、なぜこのようなわかりにくい言葉が必要とされるのでしょうか?
それは、言葉が人間の直感で簡単に捉えられない抽象的な現象を、厳密に記号化する作業だからです。こうした抽象的な言葉は、日常的な言葉から遠ざかっていく一方で、物事の本質や複雑さを深く掘り下げて表現する役割を持っています。言葉は単に情報を伝える道具にとどまらず、考えの深さや複雑さを表現するための道具でもあるのです。つまり、言葉には「伝える」機能(コミュニケーションの役割)と「考える」機能(思考形成の役割)があると言えるでしょう。
一方で、直感的で多層的な意味を持つ言葉もあります。たとえば、オノマトペ(擬音語や擬態語)です。この言葉は、触覚的な言葉の表現であり、聞いたり読んだりするだけでさまざまなイメージを想起させる力があります。オノマトペは、その場所の空気感、質感、温度感など、人が実際に感じる複雑な現象を、簡潔かつ効果的に表現できる興味深い言葉です。
その他にも、比喩(メタファー)、擬人法、象徴(シンボル)、イディオム(慣用句)、感嘆詞、これらの様々な手法を組み合わせることで、「伝える」と「考える」を直感的に促すことができます。
言葉と感覚の重なり合いが理解を深めてくれます。
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